故郷がどんな遠い場所になっても、遙か空の彼方には、必ず存在し続けるのだ。



それを教えておきたくて、彼女はきっと故郷へ行かないのか…と尋ねた。


どんな苦しさも辛さも、全て受け止める覚悟でいよう…と、最初から決めていた。


あの日、俺が彼女に言った言葉と同じ気持ちで、共に歩んでいこうと思っていたからーーーー。






「来未……」


さん付けをやめて彼女を呼んだ。

少しだけビクついた彼女は、照れながらも俺の顔を見て返事をした。


「なぁに?漠さん……」



はにかんだ笑顔が美しかった。

文字だけではなく、彼女自身も眩しいほどに綺麗だ。



……優しさの中に、強さも弱さも隠し持っていた。


今度からはそれを分け合って、重荷を減らして生きてもらおう。


「最上 来未」ではなく、「小野寺 来未」としてーーーーー。