翌朝、朝食を済ませて純也に説明した。


「明日には帰ってくるから、おじいちゃんやおばあちゃん、おじちゃんの言うことをきちんと守ってね。お土産も買ってくるし、夜には電話もするから」

「うん!きっとだよ!」

「うん、絶対にする!」


指切りげんまんをして彼を見送った。

初めて登校班で登校する背中を見守りながら、母にお願いね…と、何度も繰り返した。


「大丈夫よ!任せておきなさい!それよりも早く準備をおし。空港まではお父さんが送って行ってくれるから」


早々と車を出そうとする父に驚いて、身の回りにあった衣類をバッグに詰め込んだ。




「行ってきます!」


振り返ると母はにこやかな笑みを浮かべていた。

隣に立つ兄も、帰郷して初めて見る様な柔らかい表情をしている。


2人に手を振り、少し先に立つ人に近付いた。


挨拶もせずに逃げたあの日は塗り替えられて、新しい日々が始まろうとしている。


この小野寺 漠さんと、改めて人生を歩み直すのだ……。




「早く来んか!飛行機に乗り遅れるぞ!」



父に急かされて走った。

その胸には、感謝と希望が満ち溢れていたーーーー。