「来未さん…」


隣から伸びてきた手を握った。


「何ですか?」


ドキドキしながら声を返した。
布団の中で天井を見つめていた人は、くるりと向きを変えた。


男っぽい目線に、ドキン…と胸を震わせて見つめた。

照れくさそうに微笑んだ人は、少しだけ近寄ってきて声を出した。


「…明日、一緒に故郷へ行かないか?両親のいる菩提寺へ、報告しに行きたい…」


「小野寺さんの故郷へ?」


「そう。どうだろう?」


「勿論、賛成です!ご一緒します!…あ、でも純也が……」


隣の部屋で兄と眠る子供のことを口にした。
彼は私の側に近づき、髪を撫でながら囁いた。


「お母さんが見てあげると言ってくれたんだよ。事件の話も、君と純くんが風呂に入っている時に話した…」


「そうだったんですか。じゃあ大丈夫ですね…」


近づいてくる体温にドキドキしながら相槌を打つ。

寄せられた唇に自分の口を合わせ、そ…と優しいキスを受け止めた。



「こんな近くにいるのに、これ以上触れられないなんて残念だな…」



抱きしめられて戸惑った。

ドドド…という速さの心臓に慣れなくて、「そそそそ…そうですね」と、どもってしまった。


くっくっくっ…と苦しそうな声を出して笑う彼の胸に顔を埋める。



その体温に触れている今夜が、文字通り、私達の初夜なのだ…と、深く頭に覚え込ませたーーーーーー。