「お母さん、ありがとう!」


「が」の字にアクセントを強めた訛りでお礼を言うと、母は嬉しそうな顔をして微笑んだ。


「ほら早くお行き。国道のラッシュが始まるよ!」


急き立てるように台所を出された。
さっと自室に戻って着替え、外へと飛び出した。


工場の方からは、元気のいい純也の声が響いている。
この頃は大人達に混じり、遅くまでお酒作りについて教えてもらってるみたいだった。


同じように久しぶりに会う人にも接してもらいたい…と思った。
そんな気持ちを抱いたまま、裏手にある駐車場へと向かった。



10年以上ぶりに運転席に座った時、エンジンの掛け方すらも迷った。

ハンドルを握り、発進しだした時の恐怖は教習所以来のものだった。



……何もかもが再発見の毎日だった。

その感動を手紙で書き尽くすには、到底無理があった。


走らせようとギアに手を伸ばしかけ、思い出したかのようにメールを送った。

短かすぎる言葉を送った後で、しまった…と思ったけれど。


とにかく今は少しでも早く会いたくて、速まる胸の鼓動を身に纏いながら、ただひたすら目的地へと車を走らせた。