『今からそちらに向かいます。空港の到着時刻は午後7時半の予定です。』


メールの着信音に気づいて画面を開くと、短い一文が打たれてあった。

驚いて言葉を失くし、一瞬ぼぅっと眺めてしまった。



「どうかしたの?」


傍で料理をしていた母に声をかけられた。

ハッとして母の顔を見て、「ううん」と声には出したけれど。




「お母さん、あのね…」


思いきって打ち明けようと決めた。

心の奥深くに棲む人の存在を母に知らせておきたい…と思った。


呆れるような眼差しで私の話を聞いていた母は、またしても下らない男に捕まったのでは…という思いを拭いきれないような顔つきをしていた。


「こちらに来るという連絡が今入ったの。だから、空港まで迎えに行ってもいい?純也も、連れて行きたいんだけど…」


「純もその人のことを知ってるの?」


語尾の上がる方言訛りで問われた。

うん…と頷き返すと、「そう…」と納得している。



ダメだろうか…と緊張して見守った。

母は私の眼差しにチラリと横目を向けて不機嫌そうに囁いた。


「行ってくればいいでしょう…。晩ご飯は食べずに連れておいで。お父さんとお兄ちゃんには、私から話しておいてあげる。その代わり、純は置いてお行き。2人きりで話したいこともあるでしょうから」


ひと月近く離れていた人と会うのを理解してくれた。

話したいことが多過ぎて、確かに純也がいたら困ることもあるから助かった。