「うっ……ううっ……うっ………うああああああっ……!」




激しく泣き崩れた肩を抱きしめた。


胸の前で握られていた彼女の手からは力が抜け、俺の背中へと逃げてくる。



掌がコートの生地を撫でて、ぎゅう…っと握りしめる感触があった。




……言葉以上に態度が物語っていた。


最上来未の手は、はっきりと俺のことを欲しがった。



その心を抱きしめるかのように、優しく、力強く彼女を抱き留めた。




ーーーー掌から伝わる熱に、今夜から、眠りが変わっていきそうな気がした。



この体温を抱きしめて眠れる日が来ることを信じて、今、この瞬間の甘さを抱きすくめようと思ったーーー。






母親がいつまでも家に入ってこないのを心配して、彼が門扉から顔を覗かせる。

抱き合うようにして泣く母の姿を確かめて、遠慮がちに隠れてしまった。



……あの子とも上手くやっていきたい。

亡くなった父が自分を愛してくれた様に、彼にも父性を教えてやりたい。



あの下らない男の子供ではない。

彼は、美しい文字を書き認める、慎ましい彼女の子供なのだ。



これからはそれを肝に据えて付き合っていこう。


パニックの数が少しでも、お互いに減らしていけるように…………。