睨むような視線のままで言葉を吐かれた。

その目を見つめ直して、必死で反論していた。



「どうしてそんな無茶を言うんですか!私と一緒になっても、貴方は幸せになんてなれません!思う通りに生きて、不幸ばかりを招いている私なのに……それなのに……小野寺さんを引き込んだりしたくないっ!関わらないでっ!私のことは、放っておいて下さいっ!!」



突っ撥ねようとするのに、力が強過ぎて離れない。

押しつ押されつしながら、揉み合う様な格好になってしまった。






「来未さんっ!!」



怒鳴る声にビクついた。

興奮して顔を赤らめた彼は息を弾ませ、私の頬を両手で包み込んだ。


動きを封じられたまま顔を持ち上げられた。


その視界の中に見えた彼の目から、涙が一筋零れ落ちたーーー。



「俺を……独りにしないで欲しい……。一緒に……幸せに辿り着く努力をしよう……。純くんの為にも……その方がいいと思わないか……?」



断りにくいことを言ってごめん…と謝られた。

誠実過ぎる人の目は、真剣に私のことを見つめている…。




(……この人は、純也の父親ではない……)


血も繋がらない人に頼った末に、悲惨な事件にまで達した例は、世の中に幾つも転がっている。

そんなニュースを耳にしながら、自分は決して同じような事をしないのだ…と決めていた。




(なのに、どうして今……その意地が通せないの……!)




ぼろぼろ…と涙が落ちてくるのが分かった。

大粒なものは頬を伝って、光の玉になって消えていく。


母親になったあの日以来、泣くのはやめようと決めた。


あれ程もう泣かないと決めていたのに、

それですらもう……


止められない…………!