その気持ちを抑えながら、我が子の体を預け返してもらった……。

細い腕が首に巻きつけられ、ほぅ…と小さな息を漏らした。



「怖かったね……もう大丈夫。あの人はもう二度と、お母さん達の前には現れないから……」


来させるもんか…と思いながら抱きしめた。

この子を守って生き抜くんだと誓ったのは、桜が満開に咲いていた「晴明」と暦に書かれた日だった……。


温もりを確かめて彼を見上げた。

優しい目元の人は私を見下ろし、何とも言えない複雑な表情を浮かべている。




「小野寺さん……ありがとうございました………」



それ以上の言うべき言葉が見つからなかった。

その一言を述べただけで、必要以上に涙が溢れ始めた。



「余計なことをしてしまいましたか…?」



困ったような声で聞かれた。
その声に向かって、「いいえ…」と首を振った。


「貴方のアドバイスのおかげで…強い気持ちを得ました……小野寺さんがいなかったら……私はもしかしたらまた…流されていたかもしれない……」



紛れもない子供の父親に対し、強い態度を見せれなかったかもしれない。

泣いて叫んで怒鳴って、純也のパニックを静めることもできなかった筈だーーー。



「本当に何度も助けて頂いて……感謝の言いようもありません………。ありがとうございます………。それ以外に、申し述べようもない感じです……」


頭を下げながら、彼がここへ来た理由も分かりだした。