「故郷は遠くにあるからいいのよ。近づくと、とんでもない火傷を負うこともある。貴方はそんな目に彼女を遭わせたい?……幸せにしてあげたいと思って貰えない?…………年寄りの言うことだから、惑わされなくてもいいけど……」


そう言って涙ぐみながら笑顔を見せられた。


自分の妹の漫画家人生を支え続けてきた人は、人一倍温かい心の持ち主なんだろう。


そして、その心を知る人は、だからこそ幸せを守り抜くと決めている。



人して寄り添い合う姿を見せつけられて、いても経ってもいられずオフィスへと舞い戻った。



出てくる間際にメッセンジャーボーイが置いていった手紙は、真っ白い封筒に鳩が描かれたものだった。


その封筒の文字は美しく、でも、中身は涙と共に書かれた跡が残っていた。



『親愛なるアナタヘ…』と書き出された手紙には、ついさっき聞かされた話が綴られてあった。


その手紙を握りしめ、再び外へと駆け出して行ったーーー。