指し示された椅子を引いて座ると、津軽先生は迷うように言い始めの言葉を選んだ。
少しだけ考え、それから意を決したように話し始めた。
「あの日、小野寺さんが電話に出る為にこの部屋を出て行った後、クルミさんの故郷の話を少しだけ聞いたの。彼女の故郷は本州の外れで、大きな川がある場所なんですって」
「驚くような田舎です…って言い方をしてたわね。田舎が大好きな私達にとっては、羨ましい限りだと話したわ…」
自分の故郷を思い出したかのように、萌子さんが口を挟んだ。
それに頷き返し、先生はこう続けた。
「でもね、彼女は自分の故郷が嫌いだと言ってたわ。偏見という名の狭い考え方しかできない人達ばかりが住んでるから…と。
シビアな意見だな、と思った。でも、彼女の話を聞いてるうちにそれも何となく理解ができたの」
「……クルミさんの結婚は、周囲の誰もが反対したんですって。自分の親御さんだけじゃなく、お兄さんもご親戚の人達までも……」
「そうですか……」
やはり聞かされて嬉しいことなど何もない。
出てくるのは吐息に近い息ばかりで、これ以上は何を聞いても一緒のように思えた。
「それで、籍も入れずに田舎を飛び出して都内で生活を始めたんだけど……相手がまともに働かない人で、苦労の連続だったらしいのよ」
「風呂なしのアパートに住んで銭湯通い。まるで昔の流行歌の世界よね……」
聞き覚えのある歌を口ずさむ先生の顔を見つめた。
少しだけ考え、それから意を決したように話し始めた。
「あの日、小野寺さんが電話に出る為にこの部屋を出て行った後、クルミさんの故郷の話を少しだけ聞いたの。彼女の故郷は本州の外れで、大きな川がある場所なんですって」
「驚くような田舎です…って言い方をしてたわね。田舎が大好きな私達にとっては、羨ましい限りだと話したわ…」
自分の故郷を思い出したかのように、萌子さんが口を挟んだ。
それに頷き返し、先生はこう続けた。
「でもね、彼女は自分の故郷が嫌いだと言ってたわ。偏見という名の狭い考え方しかできない人達ばかりが住んでるから…と。
シビアな意見だな、と思った。でも、彼女の話を聞いてるうちにそれも何となく理解ができたの」
「……クルミさんの結婚は、周囲の誰もが反対したんですって。自分の親御さんだけじゃなく、お兄さんもご親戚の人達までも……」
「そうですか……」
やはり聞かされて嬉しいことなど何もない。
出てくるのは吐息に近い息ばかりで、これ以上は何を聞いても一緒のように思えた。
「それで、籍も入れずに田舎を飛び出して都内で生活を始めたんだけど……相手がまともに働かない人で、苦労の連続だったらしいのよ」
「風呂なしのアパートに住んで銭湯通い。まるで昔の流行歌の世界よね……」
聞き覚えのある歌を口ずさむ先生の顔を見つめた。

