恋する想いを文字にのせて…

それを聞いたところで、俺たちの関係が変わる訳ではない筈だ。

旦那も子供もいる人だと知らずに、いや……そうだろうと思いながらも恋をしてしまった自分がフラれたことに変化はないのだ。


聞いて何になる、とも思う。

あの美しい文字を書く人と、会えないことは変わらないのに……。



……そう思いながらも売り言葉を買った。

変わらない事実を受け止めさせられて、面白いこともありはしない。


それでも、やはり聞いておきたいと願った。

全てを受け入れて、コテンパンに打ちのめされてしまった方がいい。


深くて暗い淵の底から這い上がるのは初めてではない。

むしろ、その方が早く立ち直れる………。



頭の中に浮かんできたのは、15年近く前のことだ。

あの日、故郷の海を見ながらそれまでの人生を思って泣いた。

生まれ育ったあの場所に、悔しさと涙を捨ててきた。


あれ以上の悲しみも苦しさもないと思う。


自分の人生に課せれた重みは、あれに比べたら全てが軽い。


最上来未とのことだって、人生の岐路の一つにすぎなのだ……。




車窓の景色がビル街から田園へと移り変わり始めた。

その様変わりを見つめながら、あの日の彼女を思い出したーーー。



目を潤ませながら謝られた。

言葉を多くを語らず、感謝と懺悔だけを言い放たれた。


後ろを振り向かずに歩いて行く後ろ姿に、過去の自分を重ね合わせて見た。