恋する想いを文字にのせて…

愚かだよな…と思いつつも、無視することができなかった。

電話であんなに真剣そうだった萌子さんの声を聞いたのは初めてで、何か重大なことが隠されているのだ…と思ってしまった。



「編集長、津軽先生のご自宅へ打ち合わせに行ってまいります」


「そうか。次もいい本になるよう期待してるよ。先生にもよろしく伝えといてくれ」


「…分かりました。伝えておきます」


嘘をついてオフィスを出ようとした。

ドアを開けた瞬間、ビル内のメッセンジャーボーイが顔を出し、危うくぶつかりそうになった。


「す、すみません…!」


バイトらしき若者は帽子を軽く取ってお辞儀をした。


「こっちこそごめん。ちょっと急いでたもんだから…」


断りながらドアの隙間を抜けようとした。


「あっ…小野寺さん、手紙が来てますけど…」

「後から読むよ。デスクの上に置いといてくれ!」

「分かりました。置かせて頂きます」


すれ違うようにドアを出入りして駆け抜けた。

廊下を走りだす俺を見るのは初めての者が多いらしく、何事だ…?と首をひねる者もいた。

都合良く駅のホームに入ってきた電車に吸い込まれ、揺ら揺らと身体を動かされながら外を眺めた。



……あの日、俺が席を外している間に何の話がされたと言うんだ。

それがこの度の彼女の帰郷とどんな繋がりがあると言う?