日付の変わる頃、いつもの様に起き出して引き出しを開けた。

昼間に別れを告げた人から届いた手紙をテーブルの上に乗せ、流してはいけないものを流しながら見ていた。



黒々と書かれた文字が滲んで霞んでいく。

送られてくる言葉のどれもが自分の心を潤わせてくれた。


興味を抱いて会ってしまった。

会った瞬間の華やいだ気持ちを、ずっと持ち続けていきたいと願ったけれど……




……やはりそれは出来ないと痛感した。


今朝のようなことが起きる限り、小野寺さんとの未来はあり得ない。



そもそもこの生活自体が苦しくなりだした。


常々心配をかけ続けてきた母からの手紙にも、心が折れてしまった……。




『帰っておいで。お兄ちゃんもお父さんも待っているからーーー』



短い便りが届いたのは先週。

津軽先生のセレクトブックと母の便りが、私の心を故郷へと向けさせた。



遠き、故郷へ向けて手紙を書こうと決めたのはその時だった。

書きだしは既に決まっている。

何年も前から、書くとすればそれ以外になかった。




『長いこと心配をかけてすみませんでした。今度、家族と共にそちらへ帰ろうと思います。』



ペンを握りしめながら、重い足を向けて帰ろうと決めた。
その前にどうしても伝えておかないといけないこともあった。



『…一つだけ、教えておかないといけない事実があります……』