『最上様の年齢は存じませんが、考え方が似ている点からすると、案外自分と同年代なのかもしれませんね。

学生時代に津軽先生の漫画を読まれていたのだとしたら、少しだけ僕より年下なのかな…とも思います』



『私』と書かれていた文字が『僕』に変わった。

側で話を聞いてるような錯覚に包まれる。

その不思議さを感じつつ、文字に目を落とした。



『実のところを言いますと、僕は津軽 芽衣子先生の漫画を一切知りませんでした。

高校生や大学生の僕が少女漫画を読んでいたとしたら、それこそ変だと思いませんか?


先生の漫画を知ったのは、現在の出版社に勤めだしてからです。

それまでは実際、縁もゆかりもない生活でした。


先生の漫画を初めて拝見した時、妙に懐かしさを感じました。

『昭和』というノスタルジックな雰囲気に包まれた先生の作風は、ある意味とても興味深かった。

過去に自分の同級生たちが読んでいたかもしれないこの漫画を、もう一度世に送り出せたら…と考えました。


そのような思いがあって、先生の元を訪ねました。


津軽 芽衣子先生はとても穏やかな方で、初めて会った僕に対し、自分で作ったと言われるおからクッキーと庭に生えているミントの葉でお茶を淹れて下さいました。


どちらも心温まる味でした。

先生の漫画と同じ、『昭和』を感じさせられました。


最上様は作品の中に『昭和』を感じましたか?

もしも感じたとしたら、やはり僕と同年代だということになってしまうと思いますけれど……』