後ろでママやパパが呼ぶ声がしたけど、私は振り向かなかった。

部屋に一人で居たくない気分だったので、私はバルコニーに出た。

雨はもう止んでいた。


潤いを含んだ空気が私の頬を撫でる。

雲の切れ間から光の筋が差し込み、街が照らされた。


「虹だ……」


淡い七色のテープが雨上がりの空にかかる。

そこにあるだけで優しく煌めいて、温かい存在感を帯びていた。


家中の澱んだ空気が染み付いた私の心が、まるで浄化されるようだ。

じんわりとしみた。