すると奏次郎が私の腕をぐっと引いた。 抱きしめられる!? そう思ってしまったことを一瞬で恥じた。 私の額に強烈なデコピンが放たれたのだった。 「いったぁーい!!」 「生意気言うな、ガキ。誰も居なくなったらどうせ泣くくせに」 泣かないもん。 一人で平気なんだから。 一緒に居たい人なんか居ない。 奏次郎はまだヒリヒリする私の額に手を当てる。 冷たくて気持ちいい。 「意地張るな。力抜け」 泣きたいくらい優しい声で、奏次郎はそう言った。