奏次郎は私に手渡した写真をまたすぐに取り上げ、鞄に戻した。 「綺麗な、人だね」 そうかな、そう言いつつも顔は相変わらず誇らしげだ。 「どんな人なの?」 「そうだなぁ、世界一イイ女」 世界一イイ女。 そんな台詞を恥ずかしげもなく言ってしまうなんて。 相当惚れ込んでるんだね。 何故だか少しだけ、妬ましい。 「会わなくて良いの?」 「そうだなぁ……」 ごまかされた。 大人はいつも曖昧にしてしまうんだ。 面倒臭いから、私はそれには付き合わないけれど。