私は一つ息を吐き、肩の力を抜いてみた。 すると奏次郎はからかうみたいに笑う。 「身体の力を抜くってことじゃねぇよ」 力を抜くって、凄く難しい。ただダラッとするんじゃなくて気持ちの力を抜くってことだ。 「……私ってそんなに力んで生きてる?」 「たぶんな」 奏次郎はそう言って口からゆらゆらと煙りを吐き出した。 「奏次郎は力抜いて生きてるの?」 「んー、綾香よりは上手く力を抜けてると思うぞ。だから好きにもなれる」 私は両手をにぎにぎしてみた。ちょっとだけほぐれた気がした。