家に帰ると、リビングから母のヒステリックな怒鳴り声が聞こえた。

合間に父の欝陶しそうな声が混じる。

私は母の金切り声と父の溜息を踏み付けるように、ドスドスと階段を駆け上がった。


私の家には、沢山の汚い感情が日常として蔓延している。

疑念や癇癪、疎み、自尊心。

それらを放出する両親だって汚い。そして多分、私も。


二人の口論が止んだかと思うと、階段の下から思い切り叫ばれる。


「綾香、帰ったの?勉強しなさいよ!?」

「……やってるよ!」


窓の外の景色が藍色に染まり始めていた。