♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③

突然、春子がそう叫んだので、礼士は驚きのあまり、体をビクッとさせた。

「い、一体どうしたっていうんだい、ハルちゃん?」

「ねえ、礼士先輩?私達が、谷本さんとたえ子さんを神社までつけていった時の事ですが、覚えてますよね?

谷本さんが、可愛いより、愛しいの方が勝っちゃったって言ってたのを」

「ええと、言ってたのか…な?」

「言ってたんですっ!」

「あっ、は、はいっ!」

春子に怒鳴られて、タジタジする礼士。

そんな礼士を見て、もうっ、といった表情で春子は話を続けた。

「あの時のあの言葉からすると、おそらく可愛いは、月山さんの事で、愛しいの方は…

城田結さん」

「愛しいが城田さん…って、それってつまり…

…谷本君は、城田さんの事が好きだったって事⁉︎」

「恐らく、そうだと思います。

でも、あの話の流れからすると、その可愛いより、愛しいの方が勝ったのは、今からさかのぼる事、去年の十二月一日の事で、それより以前は、愛しい想いより可愛い想いの方が強かったんだと思います」

「でも、去年の十二月一日の、喫茶UNICOにて、偶然月山さんとたえ子さんの密会現場に出くわした谷本君は、二人が従姉妹同士だと知ってしまった。

…この平成奇術史の内容と同じだ。

城田さんの仇の従妹に、今回の大会に出場させる訳には行かない。

月山さんの大会出場を止める事即ち、たえ子さんの夢を潰す事に直結する…」

「でも、そこが実は、今回の吸血奇術師の、私達に放った、第三の結末にたどり着かせないためのミスリード(人を誤った方向へ誘導する事)なんじゃあないでしょうか?

と、言うのも、昨日こんな事があったんです」

そう言って春子は礼士に、昨日かるた部の部室内での、谷本亮と月山美加のやり取りを話した。

「成程、そんな事があったんだ。

しかし、さすがに覗きは良くないと思うけれどねえ…」

「れっ、礼士先輩!

し、仕方がないじゃあないですか!他に調査方法がなかったんですもの!

と、とにかく礼士先輩に知っていただきたい点、それは…

…谷本さんが、たえ子さんに復讐もしつつ、月山さんには大会に出場してもらいたいと思っているという点なんです!」

はあっ?といった表情で、礼士は春子に言った。

「だ、だってそれはおかしいでしょう。

たえ子さんに連帯責任を利用して復讐したいなら、月山さんの大会出場は諦めないといけないし、かといって、月山さんを出場させれば、たえ子さんへの復讐は出来なくなる。

もしくは、以前ハルちゃんが言ってたみたいに、連帯責任以外の手で、さっさと復讐すれば良かっただけ。

両立なんて、出来っこないよ」

「…私は今、ものすごい突拍子もない事を考えているのかもしれない。

もしかしたら、第三の結末って…」

「第三の結末って?」

春子の言葉に、おうむ返しに反応した礼士。

そして、更にその言葉を受けて、春子の口から語られたその言葉。

それは、その言葉を聞いた礼士だけでなく、語った本人の春子でさえも、平常ではいられないぐらいに衝撃的な内容だった。