歯の奥がガタガタする。布団は十分すぎるほどかけているし、熱はさっき測ったらまた38度をこえていた。

(…最悪だ…。)

 身体が寒くて心も寒くて、どうしようもなくなる。

(…弱くなったなぁ、俺も。)

 弱くなったのではなく、元々弱かったのかもしれない。それが、両親を失ってから誰も、本当の意味で頼ることはできなくなって、強くなったふりをしていたのかもしれないと、ぼんやりする脳で考える。
 強くあらねば、立っていられなかった。不満も、悲しみも誰にも口に出来なかった。口にしたところで何かが変わるはずもないとわかっていた。あの時はもう、何もわからない子供ではもうとっくになかった。
 情けないことに、涙が出てきた。何の涙だ、これは。

(あー…かっこ悪い…。)

 眠りすぎて眠れない。身体が眠ることを拒否している。そのくせに動こうとする意志を邪魔するくらいには重たい。

(綾乃ちゃん、早く帰ってきて…。)

 寒い身体も、寒い心もどうにかしてと甘えてしまいたくなる。
 健人の全てを綾乃が笑って許してくれるから、小さい子に戻ったみたいに全てをさらけ出して抱き付きたくなるのだ。

 震える身体を何とか起こし、冷蔵庫へ向かった。ポカリを口にするとすぅっと冷たさが身体を通り抜ける。カラカラの身体が潤ったのを感じ、テーブルを見やると綾乃のメモが目に入った。

― ― ― ― ― ―

 とにかく寝てること。眠れなくてもベッドから出ないこと。
 あと、健人が風邪ひくことなんてほんっと珍しいんだから、こういう時は気兼ねなく休むこと。

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 あまりにも見透かされた思考に、思わず笑みが零れる。
 身体が寒いのは変わらないけれど、少しだけ温みが増した。