* * *

「はいっ!日曜の朝!今日の朝ごはんは何だと思う?」

 やけにテンションの高いこの男。それもそのはずだ。今日は久しぶりのデート。

「…いい匂い。」
「その匂いの正体は…?」
「ホットケーキ。」
「大正解!綾乃ちゃんの鼻天才!」

 鼻だけかい、天才なのはという盛大なツッコミは心の中だけにしておく。本当のことをいうと、匂いだけではなくこのテンションでわかったのだが。

「ホットケーキ、好きだから嬉しい。」
「うん!」

 むくりとやや疲れの残る身体を起こし、食卓につく。丸く、きつね色よりも少し濃い色に焼けたホットケーキから、バターとメイプルシロップのいい匂いがする。

「…いただきます。」
「うん、召し上がれ!」

 テンション、もう少しどうにかしてほしい。
 そんな綾乃の願いも虚しく、健人はニコニコしている。
 小さめに切って口に放り込むと、ほんのりとした甘さが最初に広がり、その後からじわりとメイプルソースが甘さを増してくる。

「…美味しい。」
「うん。その顔が見たかったんだよね~。」
「…はい?」

 綾乃が首を傾げても、健人はニコニコ笑ったままだ。健人はとても機嫌が良い。

「綾乃ちゃん、ホットケーキ食べるとき、めちゃめちゃ可愛いんだよ。」
「ちょっと…意味が分からないかな。」

 朝からここをお花畑にするのはやめてほしい。少し低血圧気味な綾乃は全くもってついていけない。

「…嬉しいってこと。」

 健人の指が綾乃の頬をつついた。