健人は着脱に何のためらいもない。裸を見ることも見せることにも抵抗は初めての時から一切見せなかった。

「…何かさぁ、女慣れしてるわけでもないじゃない?」
「女慣れ!?俺が?」
「そう。してないはずじゃん。」
「してないはずっていうかしてないよ!付き合うの、綾乃ちゃんが初めてだもん。」
「そうなんだよね。それなのになんでそんなに余裕かな?自分の裸さらすのに恥ずかしさとかないわけ?」
「…今更、恥ずかしがった方がいいの?」
「いや、そうじゃなくて。今更なことを言っているという自覚はもちろんあるよ。」

 しかし、前々から不思議に思っていたことではあった。忠犬(21)には羞恥心というものがないのかと。

「…あんまりないかもね。綾乃ちゃんの見れたり触れたりすることは嬉しいけど、そこに自分のを見られてる恥ずかしさとかそういうのはあんまり…。」
「あ…そ…。わかった。なんかとりあえず深く考えるだけ無駄ってことね。オッケー。」
「え、な、そういうことじゃないよ!」
「はいはい、今更な質問しちゃったーごめんねー。」
「あーなんか怒ってる?」
「怒ってません。」
「背中流すー!」
「それはお願いします!」
「はーい!」

 付き合い始めたばかりというわけじゃない。だからこそそれほどまでの羞恥心もない。だけど、ときめきがなくなったわけでもない。安らぎは増えたけれど。

「はぁー…絶妙な力加減だよねぇ…ほんと。」
「おばあちゃんみたいな声になってるよ。」
「あー年増って言った!」
「言ってません!」

 弱すぎず強すぎず、本当に気持ちいい力加減で擦られる背中。

「痛くない?」
「…ほんっとに気持ちいい。天才。」
「あはは、ありがとう。」