私は焼けて崩れた校舎を前に、神威君

からの手紙を開いた。

 そこには、男の子らしい少しだけ強い

かな、という感じの筆圧で書かれた手紙

だった。

『この手紙を綺月さんが見ているってこ

とは、多分僕は死んでいると思う。でも

悲しまないでね。そこに誰がいるか分か

らないけど、もし独りだったら、覚えて

おいて。いつでも僕たちは、綺月さんの

心の中で生きているから。

 これはほんとの事なんだけど、多分、

いや確実に、綺月さんのこと好きだと思

う。もちろん恋愛として。答えは、もう

聞けないけど。

 たった一つ、言いたいことがあるんだ。

 僕は自分たちのことを可哀想な子だっ

て言ったよね。でもあれ、今更だけど間

違っているんだ。だって僕は、綺月さん

の事好きで、大事だって思ってるし。仲

間意識でも、恋愛意識でも、僕らの小さ

な教室の世界でそういう思いって成り立っ

ていると思う。

 だから、自分のことを大切にして、生き

て。誰かから託された命、繋がった命、無

駄にしないでね。長くなったけど、幸せに

なって。これが、僕の幸せでもあり、願い

だから。』

 ・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・。

 ポタ、と。

 雨が降ってもいないのに、涙が手紙を濡

らした。

「君、君!大丈夫!?」

 誰か知らない人が、この音を聞きつけて

走ってくる。