サンプル~壊れた教室~

 でも、と神威君は真っ直ぐに私を見た。

「生き続ければ、いつか本当の幸せに出

会えるはずだから。光の中を、笑いなが

ら歩けるはずだから。だから、その日ま

で生きていて」

 綺麗な顔だった。

 諦めた顔じゃない。ただ笑った。

「また、次の世界で会おう」

 そう言って、私の背中を押した。

 私の手に、レモン味の棒付きアメと一

通の手紙を持たせて。

「あ・・・・・」

 振り返ろうとしても、そのことを許さ

ないような優しい真っ直ぐな顔を神威君

は見せていた。

「生きろ!!!」

 その言葉に弾かれて、思いっきり走っ

た。

 バァァァァァンッ!!!

 何かが壊れるような大きな音がして、

でもそれを認めないかのように走った。

 大好きなんだよ。

 最後まで言えなかったこの思い、大事

に抱いて生きるから。