【綺月side】

 私達はただ走った。

 悲しみも悔しさも何もかも押し殺し、

ただ走った。

 繋がれた命を、託された思いを、受

け継ぐために。

 その時。

「ひゃあ!」

 誰かに足を引っ張られた。

 誰かと思い、後ろを見ると、そこに

いたのは。

「せ、先生!」

 ニタニタと笑っている先生。だけど

その目の奥には、焦りがちらちらと覗

いている。

「行かせはしない。お前らだけ生き残

るなんてそんなのみんな望んではいな

い。だからみんなの所に行こう」

 みんなが行ったところってどこよ。

 そんな何気ない疑問をぶつけること

もなく、先生の手を引きはがそうと必

死に足掻いた。

「・・・・・遊びたかったら、僕が相

手になるよ。ねぇ先生?」

 神威君はそう言って、先生の腹を思

いっきり蹴った。吹き飛ばされた先生

の体は壁にぶち当たり、大きな音を立

てて崩れ落ちる。

「くっ、き、貴様・・・・!」

 先生は体を縮めながら神威君のこと

を睨んだ。今更そんなものに怯える必

要はない。