サンプル~壊れた教室~

 だけど・・・・・。

「もう決めたの!目障りなの、いつもい

つも。ベッタリくっついてて、気持ち悪

いの!さっさと行ってよ!」

 叫び散らす亜梨朱の言葉がどうしても

本音だとは思えなくて、ぐっさりと胸に

刺さらなかった。

「嫌われたって、目障りだたっていい。

私は亜梨朱と一緒に生きたいよ・・・!」

 私は泣きじゃくりながらも、必死の言

葉を伝える。

「・・・・・・・神威君」

 亜梨朱はもう私の説得を諦めたのか、

神威君に私を連れて行くように目で語り

かける。

「うん」

 神威君は軽く頷いて、手を引っ張った。

「ちょ、神威く・・・亜梨朱っ・・・」

 手を伸ばして掴もうとするけれど、そ

の手は空気ばかり掴む。

 この場に残したくはなかった。

 生きて、いつか一緒に、笑いあいたかっ

た。なのに・・・・。

 亜梨朱はいつの間にか火災用のシャッ

ターのボタンを押していた。ガラガラガ

ラという音が響く。長年使われてなかっ

たため、ほこりやカビがついていた。

「神威君、綺月と仲よくね。綺月、一緒

にいられなくてごめん。さようなら。・・

・✕✕✕✕✕」

 亜梨朱の言った最期の言葉だけが、私

の耳に届かずシャッターは下りてしまっ

た。

 ただ何か大きな喪失感だけが、私の中

にあった。