サンプル~壊れた教室~

 確かにあるけど。でも。

「それをなすために、ここまで生きてき

たんだろ?大丈夫だ。きっとまた、天国

出会えると思うから。ま、死ぬ気は毛頭

ないけどな」

 そういって、秋斗は私の前に立った。

 背中で語っている。早く行け、と。

 私がためらっていると、陽輔と海斗が

笑いながら秋斗の肩を掴んだ。

「なーにカッコつけてんだよ?そういう

事なら仲よく一緒にやろーぜ?」

「サンプル達は3体いるんです。僕ら3

人の方が絶対だよ」

 そんな無茶苦茶な事を言って、一緒に

残るという海斗と陽輔。

 秋斗は驚いた顔をしたが、ふっと薄く

笑った。

「馬鹿だな。俺も、お前らも」

 そう言って、もう振り返ることはしな

かった。残された私と神威君と亜梨朱は

何も言わず、ただ駆け出す準備をしてい

た。

「行くぞ!」

 陽輔が叫んだ瞬間、私たちは駆け出し

た。すぐ近くで、肉と肉がぶつかる鈍い

音がした。タッタッタッ、と走っていた

が、亜梨朱が不意に立ち止まる。

「早く来てよぉ!陽輔も秋斗も海斗も!

みんなで帰ろうよぉ!!」

 泣きながら言う亜梨朱に3人は答えな

い。答えてしまったら、何かが壊れそう

だから。

「亜梨朱っ!!」