サンプル～壊れた教室～

　ヘロヘロな体にムチを打って、みんな

に言った。

「行くよ。緊張がほどける前に」

　みんなが頷かずとも、私は大きな音を

立てて職員室の扉を開けた。

「ここも・・・計算外だった」

　サンプルがいるかもしれないと思って

いたが、悲しいほどにその予感は的中。

　サンプルが３体、うろうろしている。

「・・・・駆け抜けて。ここが、天命の

分かれ道だよ！」

　そう言うと、一斉に走り出す。

　どことなく風が吹いて、向かい風と

なって邪魔をする。

「くっそ・・・！扉をふさがれている。

あそこを抜けなくちゃ無理だ！」

　陽輔が悔しそうに指差した場所は、

私達が抜けるはずの扉。その前にサンプ

ルの一人が立っているのだ。

　すると、私の肩に誰かが手を置く。

「秋斗・・・」

　秋斗は相変わらず透明な顔つきで、

真っ直ぐふさがれた扉を見つめていた。

「俺がたてになる。だからさっさと抜け

ろ」

「え・・・・・？」

　何を言っているのか分からなかった。

　この人は、自分がおとりになると言っ

ているの？そんなことしたら、あなたが

死んじゃうかもしれないんだよ？

　そんなこと知っている、とでも言いた

げな目で私を見た。

「お前には、やるべきこと・・・成すこ

とがあるだろ？」