サンプル~壊れた教室~

「く、このっ・・・!」

 右手で拳を作り、連の顔面にくらわせ

る。ばきっという鈍い音がして、連は髪

を掴んでいた手をはなした。

 よろよろと後ずさった連は、何が起

こったか分からないという顔で自分を眺

めた。

「な、なにすんだよぉっ!あ、あ・・・。

俺の歯、折れてんじゃねーかよぉ・・・。

どうすんだよ、痛い・・・。治せるかなぁ、

これ・・・?ち、血が出てきたぁ・・・」

 自分の前歯が折れていることに悟った連

は、さっきの威勢はどこへ行ったのか、

すっかり弱弱しい口調になる。

 この時を待っていたと言わんばかりに、

奈津は笑いながら連に掴みかかる。

「さっきはよくもやってくれたわね。覚悟

しなさいよ?連?ふふふ・・・」

 不気味な笑い声に、連は真っ青な顔になっ

て懇願する。

「や、やめろ。俺が悪かったから、許してく

れよ。ごめんよぉ・・・」

 連は土下座をして、泣きながら謝る。そん

な姿の連を見て、奈津はさらに怪しい笑みを

浮かべる。

 ガッと、奈津は連の頭に足を乗せた。

「大丈夫だよ。私に散々悪口言ってきた罪は

重いけど、私、優しいから軽くしてあげる」

 そう伝えると、連は顔を上げた。その顔に

は、安堵の感情が広がってるように見えた。

だけど、世の中そんな甘くはないんだよ、と

奈津が小さくこぼしたのを私は聞き逃さな

かった。

「死んで詫びなさい。せめてもの軽い刑罰よ!

生き続けることなんてさせるもんですか」