サンプル~壊れた教室~

「私、前からあのサンプルのことを知っ

て、先生にずっと脅されてた。この日が

くるまでしゃべるなって。じゃなきゃ殺

すって。だから言えなかった。それで、

先生がみんなにサンプルになれってせが

んだときは、みんなにやっと知ってたこ

と言えるんだなって、ほんの少しだけ安

心した。でも・・・・・」

 亜梨朱はあまりの重さの十字架に耐え

られなくなったのか、瞳からポロポロと

涙を流した。

 その涙は、木の床を濡らす。

「駄目だって、協力しろって言われて。

怖くって、逆らうことができなかった。

だから、作戦を考えたときも、先生に言っ

たんだ。こんな作戦をしますって。何度

も迷った。これで犠牲者が出たらどうし

ようって。言いに行く途中、何度も足を

止めたんだ」

 誰も何も言わない。

 言わないで、その告白を聞いた。

 だけど外で泣いてる小鳥の鳴き声がう

るさかった。

「謝ってすむ問題じゃない。そんなの分

かってる。私が一番分かってる。でも、ど

うしようもなかった・・・」

 そう言って亜梨朱はうなだれた。

 土下座して雛と強史、唯架と竜の命が

帰ってくるなら何度だってする。謝って

時が戻るなら何度だって何百回だって謝

る。だけど、その一度の過ちが、戻るこ

となんてないことぐらい、私たちは痛い

ほど知ってる。

 だから「どうしようもなかった」って

言うしかない。