「このハンカチ・・・」

 すっと神威君が差し出したハンカチを

まじまじと見る亜梨朱。すると、サッと

顔色が変わった。手は微かに震えていて、

視線を泳がせていた。

 その時、私と神威君は直感的に分かっ

た。

 ・・・亜梨朱は何か知っているって。

「どういう事、亜梨朱」

「え、綺月まで私を疑ってるってこと?

ちょっと待ってよ!」

 慌てて取り繕うとするが、そんなの効

くわけがない。

 すると面白そうに見ていた神威君が、

意地悪く尋ねた。

「疑ってるって何が??疑ってるなんて

言ってないよね?っていうか、その反応

じゃあ、そのハンカチをどこに落とした

か知ってるってこと?マヌケだねぇ~」

 にこにこ笑ってる神威君は、何か殺気

に似たトゲトゲしたものを放っている。

本当はこういう尋ね方っていいような気

はしないけど、説明してもらわないと理

解できない域になってる。・・・残念だ

けど、仕方ないんだ。

「・・・・・・・はぁ」

 観念したように、亜梨朱はため息をつ

いた。その顔は蒼白で、まるで何かに怯

えているとも思えたけれど、結局何にも

言えないまま、亜梨朱は喋りだした。

「分かったよ。知ってること、全部話す。

だけどさ、なんか後味悪いから、みんな

の前で話させてくれない?私が言えるこ

とじゃないけど、だましたりだまされた

りするのって嫌だから。それに私・・・

もう綺麗なまま生きれないし、そんな資

格ないから。だから・・・お願い」