そうだ。

 私は死ねない。

 この身に思いを託されたから。

 こんな私に、託してくれた人がいるか

ら。

「やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 渾身の力を込めて、レオナに頭突きをす

る。

「きゃああああああっ!」

 よほど痛かったのだろう。よろよろと

よろけながら、2,3歩さがる。

「私はまだ死ねない。レオナには、負けな

い!!」

 そう言って、切れた額から流れる血をぬ

ぐった。

「あああもう!何で死んでくれないの!」

 そんなことを言いながら、レオナはナイ

フを持って突進してくる。私は冷静に判断

して、それを避けて、後ろから飛びかかっ

た。

 そして後ろから前に手をまわし、腹を殴

る。

「天国には行けないかもしれないけど、私

はその命の分まで生きるから」

 そう言って、私はレオナの首にナイフを

刺した。

「ギョエえええエエッ!ギャア・・・ウウ」

 パクパクと、決して入ってくることの無い

空気を求めながら、レオナは必死に口を動か

した。

 これで私も、人殺しになったんだ。

 視界が、急に歪んだ気がする。

 おぼつかない視界を頼りに、神威君を見る。

 神威君は、真っ赤な血の中に立っていた。

 勝ったんだ・・・・・でも。

 一つの命は奪われた。

 そんなことを考えながら、ただただ立って

いた。