サンプル~壊れた教室~

 血が付くことを気にしてなかったはず

なのに、今だけはその溜まって流れてく

る血を拒んでしまう。

 少しして、頬を伝う冷たいモノに気付

いた。

 智夏が、そのグループの人が死んでし

まったことへの悲しさもきっとある。でも、

それ以上に。

 血が付くことを拒み、死をあまり悲し

まない自分の心の変化が、悲しかったん

だ。

「っ、・・・・・・ぅ」

 声を殺し泣いた。

 そうでもしないと、人が死ぬことに慣

れてしまいそうだったから。

 涙は、全てを綺麗にはらってくれる。

 たとえ、歪み始めそうな心でも。