本当にバカだ、私は。

ここにいたら、進んだ文明や美味しい料理が味わえるのに。

なのにそれよりも白鷺に会いたい。

たとえ叶わない思いでも。

「連れていっ、」

そう言いかけて、私は口をつぐんだ。

そうだ……私、大変な事を忘れていた。

岡田以蔵に……白鷺のひと振りを奪われてしまったんだった。

以蔵さんに返してもらわなきゃならない、『白鷺一翔』を。

だって白鷺一翔は妖刀で、人を斬る度にその血を吸って更に妖気を増すって……。

白鷺は言ってた。

『白鷺一翔は、俺の生み出した化け物だ。多分俺は……己の作る刀で死ぬんだろうな』って。

次に以蔵さんの言葉が蘇った。

『白鷺一翔こそ、人斬りの俺に相応しい刀だ』

人斬りが妖刀を……。

私は大きく息を吸い込むと眼を閉じて深呼吸し、それからミカヅチを見上げた。

「ミカヅチ、私を岡田以蔵の所へ連れていって」

「はあ?!」

「だから、あの幕末のあの時間の、岡田以蔵の所へ!私は白鷺の刀を取り返さなきゃならない!」

ミカヅチが眉を寄せた。

「お前本気かよ?!俺の力を無駄遣いすんな!
本当は神々の理(ことわり)として、人の運命に関わっちゃいけない決まりなんだ。だから俺がお前にしてやれる事は限られてる。決まりを破ると神の座を追われかねないからな。
それに、次に白鷺のもとへ送ってやれるかは分かんねーんだぞ。ましてや、お前の命の保証なんかもっと出来ねぇ!」