私は甥に向かってニッコリ笑った。

「祐くん、結婚て分かる?」

「分かるー。好きな人と一緒に暮らすことやろ?」

「そう。離婚はその反対やねん。真逆」

「ふーん。じゃあ、ブスのが可哀想やな。だって離婚やったらまた結婚したらえーけど、ブスは」

「こらっ!」

……まあいい。

ゆっくり大人になってちょうだい。

「ごめん、柚菜ちゃん」

兄嫁が固い表情で私を見たけど、私はフフフと笑った。

「全然!大丈夫!」

……飲んでやる。

今夜は浴びるほど飲んでやる。

私はスックと立ち上がると父の目の前に置いてあった地酒を手に取った。

◇◇◇◇◇◇


「柚菜、これ見てみ」

「ん?なになに?あら、新入り?!」

二時間後、私とお祖父ちゃんは、数々の日本刀を愛でながらお酒を飲んでいた。

酔っぱらってるのにまだ飲む私達に付き合いきれない家族はつい先ほど解散し、家中に散らばっていってしまったあとである。

私のお祖父ちゃんは大変な愛刀家で、数多くの日本刀を所持している。

お祖父ちゃんの持っている日本刀は、どれも実際に歴史に名を残した武将に使われていたもの、もしくは有名な刀匠が手掛けた本物ばかりで、模造品の類いは一切無い。

それを見極めるには熟練した鑑定士さんの確かな眼が必要となるらしいんだけど、名の通った鑑定士さんが感嘆するほどお祖父ちゃんのコレクションはレベルが高いそうだ。

だからたまに噂を聞き付けた美術家や愛刀家が、『誰々の何々を譲ってほしい』的な話をしにやって来る。