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「柚菜、よう帰ってきたなあ」

「……ただいま。お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも元気そうで良かったわ」

「柚菜が思たより元気そうで安心したわ」

「…………」

「…………」

……思ったより元気そうって、どんな感じに思われていたのかは……敢えて考えまい。

長方形のテーブルを二つ並べた実家の約二十畳の和室に座る面々は、私の家族なんだけれども。

……気まずい。

実に気まずい。

毎年お盆には帰省するんだけど、今年はいつもと皆の雰囲気が違う。

仏壇や欄間、床の間の掛軸をしきりと見たり、私と視線を合わせずにそっとこちらを盗み見している。

声かけづらいよね、そりゃ。

だって私、秋武柚菜(あきたけゆうな)は離婚しちゃったんだもの。

祖父母、両親、兄夫婦とその子供達が勢揃いするなか、父が妙な咳払いをした後、斜め向かいに座る私をチラリと見た。

「まあ、かまへんやないか。お前はまだ23や。これから先、まだまだようけ」

「なあ、柚菜ちゃん、『離婚』てなにー?」

「こらっ、祐丞!」

焦る義姉さん。

「なにー?ママ、『離婚』て聞いたらあかんのー?」

なんとまあ残酷な生物なんだ、幼稚園児という生き物は。

父の言葉を平気で遮り、傷心という名の海に放り出された当人にドストレートに尋ねるとはな。