白鷺の剣~ハクロノツルギ~

「刀匠西山白鷺」

俺の名を呼び、剣神はその漆黒の瞳を光らせて続けた。

「俺は剣神であり武神、建御雷神(タケミカヅチノカミ) だ」

タケミカヅチノカミ……。

「まあ、俺の名は長いらしくてな、柚菜はミカヅチと呼んでいたがな」

そう言いながら剣神ミカヅチは、膝をついて柚菜を覗き込んだ。

俺は必死だった。

「ミカヅチ様、お願いだ。柚菜を助けてください」

そんな俺を一瞥して、剣神ミカヅチは低い声で問い掛けた。

「お前に覚悟はあるのか?
……いいか。知っての通り、こいつは未来から来たんだ。お前を愛したがゆえに、未来の素晴らしい生活を捨ててな」

言うなり剣神ミカヅチは、俺の額に剣の柄を押し付けて呪文を唱えた。

「……っ!!」

その瞬間、俺の頭の中に見慣れない風景が広がった。

見上げるほどの建物、細長く空気を裂くように移動する見たこともない物体。

人々の服装は着物でなく、髪型もまるで違う。

食べ物、飲み物、照らす明かりも何もかもが俺の想像を越えている。

「まだまだあるが……これで十分だろ」

今のが……柚菜が暮らしていた世界なのか。

俺は呆然としながらも剣神ミカヅチを見つめた。

「柚菜は、あの世界でお前の刀と出逢い、一目で虜になってたぜ」