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「柚菜ーっ!!」

俺は声の限り叫んだ。

行灯の炎ひとつの暗い部屋の中でも、柚菜の顔が土気色に変わっていくのを感じた。

『白鷺、死んでもあなたを守るから。だから私の分まで幸せに生きて』

さっき俺の手を握ってそう言った柚菜の言葉を思い返して、再び涙が頬を伝った。

初めて柚菜を見た時、何と可愛らしい女なんだろうと思った。

真っ直ぐに俺を見る瞳に、直ぐに恋に落ちた。

正真正銘の一目惚れだ。

冷たくしたのは、これ以上柚菜を知ると自分の物にしそうだったからだ。

そうなれば、雅の生き霊が彼女を襲うだろう。

それだけは避けたかったんだ。

なのに、こんなことになるなんて。

俺は、雅の懐剣を胸に受け、力なく横たわる柚菜の手を握り締めた。

「柚菜、お願いだ。死なないでくれ」

その時激しい閃光が部屋に射し込み、やがて銀色の光が全てを照らした。

あまりの事に何が何だか訳がわからない。

「どうしているかとちょっと見に来てみりゃ……」

突然深くて低い辺りを震わすような声が響き、俺は柚菜の身体を抱いたまま、慌てて部屋の天井から床までをくまなく見回した。

すると漆黒の長い髪と瞳を持つ精悍な男が部屋の中央に現れて、憮然とした表情で部屋をグルリと一瞥した。

「おい、マジかよ」