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「そんな不細工な顔して泣くなよぉ」

宗太郎は困り果てたように私を見た。

「不細工とか言わないでよぉっ。
だっ、て、白鷺がっ……うわあああん!」

私の涙を手拭いで拭きながら、宗太郎は私をヨシヨシと撫でた。

「しかし、雅が生き霊だったとはな……」

「白鷺は知ってたみたいなの。生き霊の正体が雅さんだって」

宗太郎は部屋の真ん中で胡座をかき、ガシガシと髪をかきあげた。

「アイツの事だ。そうせざるを得ない何かを抱えてるんだろう」

宗太郎はそう言うと立ち上がり、水瓶から柄杓で水をすくうと土間に撒いた。

真夏の日中は暑く、打ち水もすぐに乾く。

……わかってる。

白鷺はたった独りで何かに耐えようとしているんだ。

「それに、お前を守ったんだろう。雅がお前に妙な感情を抱かないように」

私は鼻をすすりながら頷いた。

「分かってる。だけど嫌なの」

「そりゃ、好きな男が他の女抱いてりゃ辛いわな」

「はっきり言わないでよっ、宗太郎なんか嫌い!」

「こらこら」

宗太郎はどうしようもないといったように頭を振りながら、私に少し微笑んだ。

「白鷺は絶対にお前を迎えに来るから、早く涙を拭いて待ってろ」

「来ないよ、絶対。今頃は」