……白鷺はきっと教えてくれないだろう。

でもこのままでは、いつか白鷺は生き霊に殺されてしまうかもしれない。

そんなの嫌だ。

そんなこと、許せない。

「柚菜」

その時後ろから低い白鷺の声がした。

ドキンと心臓が脈打つ。

白鷺が好き。

この人を守りたい。

意を決して立ち上がると、私は白鷺を振り返った。

「……白鷺、話があるの」

「……どうした?」

心配そうに僅かに眉を寄せた白鷺を見上げて、私は着物の袖から懐剣を取り出した。

その懐剣を見た途端、白鷺が息を飲むのが分かり、私は弥一さんの言葉を実感した。

やっぱり白鷺は知っているんだ、生き霊の正体を。

「これ、白鷺が一振りしたのよね。
……持ち主は誰?」

眼を見開いて私を見た白鷺の顔が、みるみる苦痛に歪む。

「答えて、白鷺」

「柚菜……」

苦し気に私から顔を背けた白鷺に一歩近付いて、私は再び彼に問いかけた。

「白鷺、答えて」

その時、

「それは私の物よ」

少し離れたところから凛とした声が響き、私は心臓を掴み上げられたような衝撃を覚えた。