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……頬が痛い。

眠ってるのに……宗太郎ったら。

頬の傷に、何かを押し当てている感覚がする。

「痛い……やめてよ宗太郎」

私は眼を開けずに、頬に伸びた宗太郎の手を払いのけた。

「ダメだ。ちゃんと薬を塗らないと傷が残るだろう」

ピリピリと滲みる。

すごく痛い。

「いいからやめて、痛いってば!」

「暴れるな」

「やだ、触んないでっ!滲みる」

宗太郎があまりにもしつこいものだから、私は眼を開けて身を起こすと彼を睨んだ。

「きゃあああっ!」

「うるさい」

目の前に、宗太郎じゃなくて白鷺がいた。

「あれ、あの、なんで?」

白鷺は端正な頬を僅かに傾けて、ムッとしたように私を見た。

しかも私の質問にはまるで答えず、視線を落としてシゲシゲと布団を見つめて口を開いた。

「お前は……こんなに宗太郎に近寄って寝てるのか」

「は?」

だって、この時代の夜って暗いんだもの。

離れていたら怖い。

白鷺は私のリアクションが気に入らなかったのか、ツンと横を向いた。