白鷺の剣~ハクロノツルギ~

「兜を着せた罪人は真っ二つにされた事にも気付かずに、斬らないでくれと泣いてたらしい」

宗太郎はのめり込むように空を見据えたまま話し続けた。

「刀を買った男はそれから数年間、罪人相手の人斬りで満足していたらしいが、ある日思い立った。
この白鷺一翔で、腕の立つ相手と勝負してみたいと。
男はある道場へ赴いた。
いわゆる道場破りとして」

話が大きく動いていく予感がして、私は両手を握り締めた。

「最初、道場主は男を相手にしなかったそうだが、男が炊事中の妻の着物を切り裂いた事に立腹し、勝負を受けたらしい」

宗太郎はそこまで言うとホッと息をつき、再び続けた。

「竹刀での勝負であっけなく打ち負かされた男は逆上し、道場内で白鷺一翔を抜き放つと道場主へ斬りかかった。だが再び負けたんだ。道場主が咄嗟に抜いた脇差しが白鷺一翔を跳ね上げ、あまりの勢いに跳ねた白鷺一翔が男の首に刺さってな。その男には元々、剣の腕などなかったんだ。道場主へ戦いを挑んで勝てるわけがない」

「じゃあ、白鷺一翔は……」

宗太郎は頷いた。

「多分今までに斬り殺してきた罪人達の怨念が白鷺一翔に宿り、男の死を手伝ったんだろうよ。道場主の話では、男は首に刺さった白鷺一翔を見つめて何やら呟いていたそうだ」

……何を呟いていたのだろう。

怖い。

「その剣術道場は、まだあるの?」

私の問いに宗太郎は首を振った。

「昔から愚行が目立ち、評判の悪い男らしかったが、男が藩主の遠縁だというのは満更嘘じゃなかったらしい。姫路藩の審議の元、道場主の一家には、形だけだが播磨払いという沙汰が下ったらしい。だから今現在、何処に居るかは不明なんだ」