白鷺の剣~ハクロノツルギ~

身をよじると白鷺の首に腕を絡めて、私は彼の唇を塞いだのだ。

だって説明する気は更々ないの。

それに白鷺にキスがしたかった。

悪いことをしているのは百も承知で、あの女性に申し訳ないと思った。

彼女の存在を知りながら白鷺にキスをしてしまった私は汚い女だ。

ごめん、本当にごめん。

拓也の事を言える立場じゃない。

白鷺。

私、まだあなたが好きなの。

だから、あなたを守りたい。

妖刀になってしまった白鷺一翔を、元の刀に戻したい。

白鷺が作ったのは妖刀なんかじゃないって、早く思わせてあげたい。

白鷺に何か……誰かが取り憑いているのだとしたら、私がそれから守りたい。

だって、死ぬほど好きなんだもの。

私がキスをしている間、白鷺は何故か拒絶しなかった。

それが白鷺の優しさなのか同情心なのかは分からない。

私はゆっくりと顔を離すと白鷺を見つめた。

綺麗な二重の眼。

涼やかな澄んだ瞳。

通った鼻筋に精悍な頬。

こんなに近くにいるのに、私には届かない。

「ごめん、キスして。白鷺には恋人がいるのに本当にごめん」

「柚菜」

私は身を起こして白鷺から離れながらそう言うと、浅く笑った。

「白鷺があまりにも素敵だから我慢できなくて。ごめんなさい。それに頬の傷も大したことない。だからもう気にしないで。説明することは何もないわ。
それから、今晩からは宗太郎の家に泊めてもらうことにするね」