白鷺の剣~ハクロノツルギ~

「なにそれ?自分の家じゃないくせに」

思わず突っ込みを入れてしまい、慌てて口をつぐんだけど、以蔵さんは一瞬眉をあげて私を見た後、僅かにムッとした。

「だ、だってそうじゃん」

「黙れ」

身を起こして私を正面から見ると、以蔵さんは握ったままの手を縮めて私を引き寄せた。

「きゃ」

トン、と額が以蔵さんの固い胸に当たったかと思うと、そのまま後頭部に手を回されてお互いが密着する。

男っぽい以蔵さんの身体と、フワリと漂う彼の香りに心臓が爆発しそうになり、私は身をよじった。

「あ、あの、以蔵さん」

「……待ってろ」

素早く私の頬に唇を寄せてそう言うと、以蔵さんは身を翻して家から出ていった。

なに、今の。

頬に残る以蔵さんの唇の感触。

何故かドキドキして仕方なかった。

◇◇◇◇◇◇◇

多分、数時間後。

気が気じゃなかった。

以蔵さんが帰る迄の時間が恐ろしく長く感じて、私は落ち着きなく部屋を歩き回った。

だってここ、以蔵さんの家じゃないんだよ?

不法侵入なんて、生涯を通して一回もやることないと思ってたのに、やってしまった。

こうしてる間に住人が帰ってきたらどーすりゃいいのよ。

もう、やだやだ、早く帰ってきて。