白鷺の剣~ハクロノツルギ~

◇◇◇◇◇◇◇◇

「ねえ、以蔵さんったら」

いつまでも寝転がっている以蔵さんに、私は業を煮やして声をかけた。

相変わらず以蔵さんは私と話す気がないらしく、なにも言葉を発しない。

けど、私の膝に頭を乗せたままだし、手も握ったまま。

……なんなんだ、これは。

こんなの恋人同士みたいじゃん。

そう思った瞬間、白鷺の顔が脳裏に浮かんだ。

白鷺は今頃どうしているのだろう。

あの人……粋に桔梗の着物を着こなしたあの美しい女性といるのだろうか。

……白鷺に会いたい。

思わず小さな溜め息が漏れた時、以蔵さんが低い声で私に問いかけた。

「お前は……西山白鷺とどういう関係なんだ」

心の中を見透かされているようなタイミングにドキンと鼓動が跳ねる。

けれど次に、グーッと胸が押し潰されるような苦しさを感じて私は眉を寄せた。

「……無関係」

以蔵さんはピクリと僅かに身体を揺らした。

「関係ない男のために、お前はこんなところまで俺を追ってきたのか」

「……うん。お金もないのに白鷺に剣を作って貰ったし、迷惑かけちゃったし、私に出来ることは何でもしたいの」

白鷺が好きかと尋ねられるかもと思ったけど、以蔵さんは何も言わなかった。

「……出掛けてくる。日暮れまでには帰るから家から出るなよ」