「……なに?」
「刺青か?」
なんの事か分からず一瞬眉を寄せたけれど、私は直ぐに背中の事だと分かった。
ミカヅチに剣を押し当てられた私の背中を、以蔵さんは見たのだ。
「柚菜」
返事を催促するように以蔵さんは私を呼んだ。
実は、どんな風にミカヅチの剣が描かれているのか私自身知らなかった。
あの時の、焼け付くような背中の痛みだけは今も鮮明に覚えている。
私はコクンと頷いた。
「何故だ?」
「……言っても信じてもらえない」
以蔵さんは唇を引き結んで私を見つめた。
「以蔵さん、まだ寝てなきゃダメよ。私、すぐ戻るから待ってて」
私は出来るだけ明るくそう言って土間に下り、引き戸を開けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
塩と卵と豆腐と川魚を買って戻ると、以蔵さんは少し驚いたように私を見た。
「言っとくけど盗んだんじゃないからね」
そう、これは昨日一日分の私の給料だ。
「塩と卵は二軒隣のお爺さんが分けてくれたし、豆腐は角が欠けた売れ残りを安くしてもらえたの。川魚は近所の親子連れがただでくれたしね、ラッキーでしょ」
「……ラッキー?」
聞きなれない言葉だったらしく、以蔵さんは眉を寄せた。
「幸運だったって意味。待ってて!今から朝ごはん作るから」
女将さんに返し損ねたタスキで袖を縛ると、以蔵さんは朝食が出来上がるまで何も言葉を発することはなかった。
「刺青か?」
なんの事か分からず一瞬眉を寄せたけれど、私は直ぐに背中の事だと分かった。
ミカヅチに剣を押し当てられた私の背中を、以蔵さんは見たのだ。
「柚菜」
返事を催促するように以蔵さんは私を呼んだ。
実は、どんな風にミカヅチの剣が描かれているのか私自身知らなかった。
あの時の、焼け付くような背中の痛みだけは今も鮮明に覚えている。
私はコクンと頷いた。
「何故だ?」
「……言っても信じてもらえない」
以蔵さんは唇を引き結んで私を見つめた。
「以蔵さん、まだ寝てなきゃダメよ。私、すぐ戻るから待ってて」
私は出来るだけ明るくそう言って土間に下り、引き戸を開けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
塩と卵と豆腐と川魚を買って戻ると、以蔵さんは少し驚いたように私を見た。
「言っとくけど盗んだんじゃないからね」
そう、これは昨日一日分の私の給料だ。
「塩と卵は二軒隣のお爺さんが分けてくれたし、豆腐は角が欠けた売れ残りを安くしてもらえたの。川魚は近所の親子連れがただでくれたしね、ラッキーでしょ」
「……ラッキー?」
聞きなれない言葉だったらしく、以蔵さんは眉を寄せた。
「幸運だったって意味。待ってて!今から朝ごはん作るから」
女将さんに返し損ねたタスキで袖を縛ると、以蔵さんは朝食が出来上がるまで何も言葉を発することはなかった。


