白鷺の剣~ハクロノツルギ~

「大丈夫だから。そんな卑怯なことはしないわ。だから安心して」

私はそう言うと、以蔵さんの瞳を見つめた。

「今は休んで」

私が言い終える前に、以蔵さんの身体が沈んだ。

フワリと彼の髪が首筋にかかる。

「以蔵さん?」

ダメだ、高熱で朦朧としてるんだ。

「……寒い」

以蔵さんがポツリと呟いた。

「……待ってて、以蔵さん」

私は以蔵さんの下から這い出て起き上がると、彼の腰から刀を引き抜いて側に置いた。

それから布団を掛けると、持っていた手拭いで彼の額の汗を拭う。

夏の蒸し暑さも今の以蔵さんにはただ寒いだけらしく、ガタガタと震えている。

ダメだ、こんな薄い掛け布団じゃ。

私は手拭いを土間の水瓶の水で濡らすとギュッと絞り、以蔵さんの額に置いた。

行灯を引き寄せ、以蔵さんの枕元に置くとその顔を覗き込む。

端正な顔が苦しげに歪んでいて、どうしていいものかと焦りだけが大きくなり、私は以蔵さんの手を握った。

寒いからか手までがガタガタと震えている。

「寒いの……?」

無意識なのか、以蔵さんが眼を閉じたままコクンと頷いた。

ええい、仕方がない。

いやらしいと思われるかもしれないけど、温めるのはこれしか思い浮かばない。

「以蔵さん、今から身体を温めるけど後で怒らないでね」