白鷺の剣~ハクロノツルギ~

……メチャクチャ怒ってるし。

「入れ」

何処をどう走ったのかはまるで分からなかったけれど、以蔵さんは長屋のような家々が立ち並ぶ中、一つの細い戸口を開けて私にそう言った。

く、暗い。

やだ、怖い。

足下がまるで見えないし……。

「早く入れっ」

ドンッと背中を押されて焦り、私は思わず叫んだ。

「押さないでよっ!暗いんだから何かに躓いたら……」

「知るかっ!」

以蔵さんはかなり機嫌が悪いらしく、更に私の背中を突いて家の中へ入れた。

「見えないんだけどっ!以蔵さん、電気……じゃない、行灯つけて」

チッと以蔵さんの舌打ちが聞こえたけど、暫くすると少し部屋が明るくなった。

思わずホッと息をつく。

「あー、怖かったあ!ありがとう」

そう言って眼をあげると、以蔵さんは実に恐ろしい眼で私を睨んだ。

「女」

「柚菜です」

更にムッとした以蔵さんは、額に玉のような汗を浮かべていた。

そりゃ走ってきたから当たり前だけど……なんだか息もまだ荒い。

その時、以蔵さんの身体がグラッと傾いた。

咄嗟に彼の腕を掴むと、

「触るな」