白鷺の剣~ハクロノツルギ~

こんなところで放り出されちゃ困る。

かといって店には帰れない。

「私、以蔵さんを探しに来たんです。白鷺の刀を返してもらえるまでは傍を離れません!」

背を向けて立ち去ろうとしていた以蔵さんは、足を止めてこちらを振り返った。

「お前一人で俺を追いかけてきたのか」

私は頷いた。

……ミカヅチに運んでもらったんだけど。

「白鷺一翔を返して」

瞬間、以蔵さんが眉間にシワを寄せて私を見据えたかと思うと、一気に距離を詰めて私の着物の首元を掴み上げた。

「いい加減に」

もう、一か八かだ。

私は大きく息を吸い込むと力の限り叫んだ。

「きゃあーっ!!誰かーっ、このお侍さんが、私の胸をーっ」

たちまち橋の上で人々が立ち止まり、私達を見た。

「捕まえてくださいっ!」

「バカかっ!来い!」

「きゃああっ!」

手を繋がれたまますごい早さで走られて、私は転びそうになりながらも必死で以蔵さんに付いていった。

多分騒いだ私を置き去りにして、素性がバレちゃまずいんだと思う。

大きな通りから狭い裏通りを抜け、私達は散々走った。

「以蔵さん、もう無理っ」

疲れすぎて息が上がり、足が絡まりそうになって私はギュッと眼を閉じた。

その直後、以蔵さんが漸く足を止めた。

ハアハアと無言で荒い息を繰り返して、以蔵さんは私を睨んだ。